淡いピンクのドレスを着て横たわるお人形は、スタイナーの初期モッチマンと呼ばれるお人形で、19世紀の印象派画家たちの影響を受けて描かれた、坂東敏雄の作品です。人形の白い肌とドレスのディテールが美しく描かれています。
板東敏雄は1895年7月16日、日本の徳島にー二つの武家の流れを汲む武士の孫として生まれる。1922年7月にパリに渡り、モンパルナスに居を移した後、知人の勧めにより藤田嗣治と出会い、二人はすぐさま友情で結ばれる事となり、藤田は喜んで若き板東にパリでの生活について伝授し、友人や、契約していた画商ジョルジュ・シェロンにも紹介し坂東の活動を応援しました。
板東は藤田と共に、パリで画業を全うしようと考えた数少ない日本人芸術家の一人でした。
戦間期にパリに留学した日本人画家は数百名にものぼりましたが、皆、最終的には帰国して日本での地位や職に戻って行きました。しかし、坂東と藤田だけは、フランスの地を自ら選択して終生、卓越した同化を見せ、フランス・パリにて自身の芸術を生み出した。